Justice再読: 第4章 Hired Help/Markets and Morals(後半) 代理母出産

Justice: What's the Right Thing to Do?をメモを取りながら再読中。導入部の第1章功利主義第2章リバタリアニズム第3章、志願vs徴兵の第4章前半の続き。

第4章後半は、代理母出産の例題について議論。

代理母出産」のまとめ

例題(実話)

Stern夫妻は、夫人の健康上の理由から子供を作れなかったので、代理母出産を考えた。この仕事を$10000で引き受けたのは、すでに2児の母であるMary Beth Whitehead、29才。Stern氏の精子を人工受精したMaryは、無事に女の子を出産した。しかし、どうやら妊娠中に情が移ってしまったようだ。Maryは赤ちゃんの受け渡しを拒否した。まずいことに、New Jerseyの法律では、代理母出産の可否について規定していないので、どちらに権利があるのか不明。こんな状況で裁判開始!!Stern夫妻とMary、どちらに子供を渡すのが正しいだろうか?
ちなみに、功利主義者とリバタリアンはStern夫妻を支持するだろう。理由省略。

契約の正当性について

Stern側主張。契約は契約だ。途中で気が変わったからといって、一方的に破棄していいはずがない。
Mary側主張。契約が不当だった。妊娠中にここまで情が移るとは事前に知るよしもなかった。

「赤ちゃんを売る」という行為について

Stern側主張。赤ちゃんを買うわけじゃない。最初からStern氏のものだ。妊娠して出産するというサービスを買っただけだ。
Mary側主張。赤ちゃんを渡すというのは、人間を売るということだ。許されないことだs。

「出産」を金で買えるサービスとみなして良いのか

Stern側。何が悪い?現に精子はStern氏のものであり、遺伝子的にも親だ。
Mary側。だめ。「出産」とは特別なものであり、他の金で買えるサービスと同一視はできない。それは女性を道具とみなすことだ。人間をリスペクトしていない。


なんだかんだで、裁判はMary側が正しいことになってしまった。(信じられないなー)
ただし、子供の将来を考えて、養育はStern夫妻にゆだねられることになった。(よかった。)

感想

この例題はいまいちだったかもしれない。功利主義リバタリアニズムの欠点は示せてない。単に裁判所がバカでした、ということでは。「出産」を特別視する思想を持つのは自由だが、根拠もなくその思想を押し付けられても困るわけで。
違う考え方だっていくらでもありうる。例えば自分の考え方としては、出産ってそんなに最上級に偉いもんじゃないと思う。たしかにものすごく大切なことではあるけど、例えば出産育児教育の3つで勝負したら、出産がいちばん楽なんじゃないかな。育児や教育は、一般的に金で買うことになんの抵抗もないはず(ベビーシッター、保育園、塾、学校)。なんで出産だけを特別扱いするんだか。
実際、最近だと大阪2児遺棄事件なんていう恐ろしい出来事もあった。出産はできたけど育てられなかったんだ。やばい、思い出したら気分悪くなってきた。

第4章は前半・後半ともに、面白かったが納得できなかった。それでも続きは読んでみたい。次は、一周目で最もわからなかったカントなので、じっくり読みたいと思う。