Justice再読: 第10章 Justice And The Common Good(後半)
Justice: What's the Right Thing to Do?をメモを取りながら再読。今回で終了。
今まで読んだ章
- 第1章 導入部
- 第2章 功利主義
- 第3章 リバタリアニズム
- 第4章前半 志願制vs徴兵制
- 第4章後半 代理母出産の是非
- 第5章 カントの思想
- 第6章 ロールズの思想
- 第7章 Affirmative Actionの是非
- 第8章 アリストテレスの思想
- 第9章 コミュニタリアニズム
- 第10章 前半 宗教と正義の関係
第10章後半は、本全体のまとめと、今後の展望的な話。
第10章 後半まとめ(本全体のまとめ的な内容)
本全体のまとめ
今まで見てきたように、正義とは何か、を追求するアプローチは大別して3通り。
- (1) 幸福を最大化する
- (2) 選択の自由を最大限尊重する
- (3) 美徳やCommon Good(共通善?)を追求する
- #宗教や道徳観も(3)と同一視か?ちょっとまとめすぎな気もするが・・・
本の筆者(サンデル教授)は(3)が好きだ。なぜなら、正しい社会というものは、単に幸福や自由を追求するだけでは到達できない、と思うからである。
正義を判断するためのたった一つの法則を見つけるのは不可能だ。なぜなら、良き人生とは何か(Common Goodとは何か)という議論を避けることはできないからだ。
感想
「単に幸福や自由を追求するだけではダメ」という主旨には全く賛同できない。功利主義者だって「GNPを上げればOK!」とか言わないだろうし、リバタリアンだって「成績を金で売れ」とは言わないんじゃないか。ここで言っているCommon Goodとか言うものは、すべて第2章の功利主義、第3章のリバタリアニズム]、第6章のロールズなどの思想でも十分に議論できるものだと思う。
ただ、行間読んでるので誤解しているかもしれないけど、この本の主張は理解できた気がする。
要するに、
- 幸福や自由だけを追求する思想は、その主旨を履き違えやすく、暴走すると弊害が多い
- (アメリカでは)実際に暴走しており、弊害が出ているから、一度落ち着いて考え直せ
ということなんだろうと。
例えばリバタリアンの思想。本来、自由を尊重するというのは「他人に迷惑をかけない」という前提付きのはず。しかし、いつの間にか前提が無視され、無制限に自由が認められてしまい、結果的に他人に多大なる迷惑をかけてしまう事例が発生する(サブプライムローン問題とか)。そのような暴走を防ぐためには、意識的に美徳(その他)を取り込んだ政治の方が現実解としてうまくいくのではないか。
そういう主張だったんだと解釈して、自分としてはすっきりする事にした。
本全体の感想
- いろんな思想について理解した気分になれて、かなり面白かった。今後ニュースをみたり、ウェブ上の議論を見たりする時に、色々と知ったかぶりできて楽しくなると思う。
- 紹介されていた思想の中では、自分はロールズが一番好き。「無知のヴェール」の概念は実生活でも応用が効きそう。
- 読み飛ばしても意味がわかる小説と違って、真剣に読まないと意味不明になる。面白かったけど疲れる。多読には向かないかも。