Justice再読: 第2章 The Greatest Happiness Principle/ Utilitarianism(功利主義)

Justice: What's the Right Thing to Do?をメモを取りながら再読中。

第2章 The Greatest Happiness Principle/ Utilitarianism まとめ

功利主義(Utilitarianism)まとめ。

Jeremy Bentham(1748-1832)の功利主義(Utilitarianism)

道徳の最高原理は、喜びの総和から痛みの総和を差し引いた、幸福の度合いを最大化することである。したがって正義とは、幸福を生み出し不幸を妨げるもの、すなわち'utility'を最大化することだ、という考え方。Jeremy Bentham

John Stuart Mill(1806-1873)の思想

ベースは功利主義。ただし、個人の権利を尊重することにより、長い目でみれば世の中がハッピーになる、したがって功利主義的に言っても個人の権利は尊重すべきである、という考え方。MillはBenthamの弟子。

功利主義的な考え方の例

Benthamが提案した政策の例(実現はしなかった)。
乞食をworkhouseにあつめて働かせる。

  • 利点(幸福を増やす要素)
    • 道で乞食を見て同情し、心を痛める必要がなくなる
    • 道で乞食を見て不快感を感じる必要がなくなる
    • 乞食にとっても、すむ所ができて幸福なはずだ
  • 欠点(幸福を減らす要素)
    • 乞食の境遇を気に入っている乞食には、単に迷惑な話だ

利点が欠点より大きいので良い、という主張。

功利主義への反論

ざっくり以下の3通り。

  • (1) 功利主義は、多数の幸福のために少数が犠牲になることを容認する。
  • (2)utilityと比較できない価値が存在する。人の命とか。
    • (2)への反論。そうはいっても、現実にみんな命とutilityを交換している。たとえば、車を使う便利さのために、交通事故死を容認しているではないか。
  • (3) 何がどれだけ幸福で、何がどれだけ不幸なのか、統一した基準を作ることはできない。

感想

本書で紹介されていたなかで、もっとも理解しやすく納得しやすい思想だと思う。現時点で自分は功利主義者ということにしよう。反論はいずれも説得力がない。
まず、反論(1)のように、少数が多数のために犠牲になるのを避けるべきというなら、単に配点を調整すればいいと思う。犠牲になる不幸は、100億人分の幸福を打ち消すくらいに大きい、とか。
反論(2)は、本書の中にある交通事故死の例で十分。
反論(3)はミスリーディングだと思う。たしかに、みんなが納得する統一した基準は作れないだろうし、その点であいまいさは残る。その意味で完全ではないのだろう。しかし、この本で紹介されている他の思想(リバタリアン、カント他)は、これよりもっとあいまいだったと思う。あいまいだからダメ、とか言っていたら、すべての思想が却下されるだろう。
1回目に読んだときは、とくに反論(3)を見て「功利主義にも欠点があるな」とか思ったのだが、再読してみると屁理屈に見えた。